第7回全国市議会議長会研究フォーラム

【研修報告】
視察先:愛媛県伊予市・松山市 第7回全国市議会議長会研究フォーラム
日時:24年10月9日(火)~11日(木)

【10月9日(火)伊予市 『伊予国「あじの郷(くに)」づくり事業を通した食育への取り組み』について】


【伊予国「あじの郷」づくり事業】        【伊予市庁にて】

伊予市の潜在的に持つ魅力は、削り節産業・新鮮な魚介類・かんきつ類を中心とした農産物などの「食材」をおいてないという結論から、食をテーマとして市内の拠点施設を活かし、まち全体の活性化の流れをつくる取り組みを実施。その取り組みの具体的な内容が『伊予国「あじの郷」づくり事業』である。この事業のステップとして①組織づくりと小さな成功の積み重ね ②積極的な情報発信と市民の誇りの醸成 ③市民・学校・企業・行政が自主的に参画するまちづくり をあげている。

①については、企業・農漁業などの各種団体などのメンバーで構成される実行委員会を設立。全国公募のキャラクターやキャッチコピーを創出。地元の食材である鱧(はも)(家庭では骨処理など難しそうで料理として敬遠されぎみ)を使用した祭りの開催。また、山梨県北杜市との遠隔連携(お互いの農特産物を扱う等)などが挙げられる。②については、1万人以上が来場した「あじの郷」フェスタの開催。市広報誌を活用した食材や食に係る人の紹介。FMラジオや情報誌を通しての食に関する情報発信などである。③については、幼稚園・保育園の園児達が調理体験を通して、食材に親しみ自主性や協調性などを養う工夫や地元の食材(野菜)を学校給食に活用する取り組みで、今後はいわゆるB級(形悪い・少しキズもの)を取り扱える体制≪市場に出せない二束三文の野菜が、売り上げにつながる仕組み≫など検討しているとのこと。

以上の内容を聞き、改めて 本来のご当地の魅力(伊予市の場合は食)を見直し・磨き上げる大切さを学んだ。また、1つの事業を成功させるためには、多方面で施策を講じる必要を痛感した。自分自身も地産地消の取り組みや特産物のブランド化など一般質問などを通して、執行部に働きかけているが、今回学んだ点を本市に活用できるよう努めていきたい。併せて、地元の魅力の再発見を意識して行動したいと思う。

 

【10月10日(水)・11日(木) 松山市 第7回全国市議会議長会研究フォーラムについて】


【研修会場内の様子】

初日は、前総務大臣 片山善博氏による基調講演『地方自治の課題と議会のミッション』について講演があった。今回の中心的な話の内容は、教育委員会と議会についてであった。主な内容は、当然ながら議会は議決という最終的な決定権を持っている。また、教育の根幹は、市町村に現在大部分が移譲されている。

従って、議会は、教育委員の選任責任(議決)とチェック機能としての監査(この人物が教育委員にふさわしいか)の2面責任がある。大津市のいじめの問題の教育委員会の在り方などマスコミなどに取り上げられているが、最終的に委員会を構成している「委員」を決めている(議会の承認議決)のは、議会であることを再認識する必要がある(委員会が悪いという発想でなく、そういった委員を議決した議員に責任がある)。

そのような観点から教育委員の予定者を議会にお呼びし、教育論など聞き取ることも必要となってくるとのことであった。
続いて、「地方議会における政策形成の在り方について」の4名のパネリストと1名のコーディネーターに続いて、「地方議会における政策形成の在り方について」の4名のパネリストと1名のコーディネーターによるパネルディスカッションがあった。パネルディスカッション形式だったので、以下に各自の持論や指摘や提案などの内容をまとめる。

【佐々木信夫氏(中央大学経済学部教授) コーディネーター】
地方議会の役割は、①公共の決定者(議決) ②権力の監視者(市執行部のチェック) ③政策立案者(議
員提案条例)④民意の集約(住民の意見・要望を執行側に届ける)である。議会は、複数の議員の合議体で
あるから、議論を重ね結論を出すまでに一定のルールの下で相応の時間を要する。しかし、それこそが多様
な民意を代表する議会の持ち味である。そうして徹底した議論から、現実的な妥協策を探ることができる。
広く住民に問題点を明らかにし、住民の関心を喚起し、その理解と参加を得ていくことが、議会のもつ本来
の機能である。
【江藤俊昭氏(山梨学院大学法学部教授) パネリスト】
地方議会に求められていることの1つは行政改革(議員定数や報酬)と、もう1つは議会改革(地域民主主
義の実現:さまざまなレベルの討議を重視し議会と執行側が切磋琢磨)である。議会には、条例・予算・決
算・主要な計画・執行権限など議決を行う。つまりとんでもない位の権限を与えている。その理由は、議会
は複数の議員により構成され多様性があるためであり、議論の中で考えをまとめる効果=世論形成が出来る
からである。
【金井利之氏(東京大学公共政策大学院教授)】
議会は立法(条例制定)における拒否権プレーヤーであるが、中心主導機関ではない。中心指導機関(いわ
ゆる執行部)が政策形成の際に条例制定を必要とする状況にしなければ、議会は相手にされない。従って、
議員提案条例は基本的には無理があると考えた方が良い。一方で、政策形成過程の要所・要所を議会の舞台
で行わせるような工夫が求められる。つまり、執行部側で統一していない事項について、議会の場で執行部
関係者間に議論をさせたり、住民など関係者をなるべく議会に呼んで個別の意見を開陳して貰ったり、審議
会・住民参加会議体も基本的には議会のもとにおくような取組が必要である。
【坪井ゆづる氏(朝日新聞仙台総局長)】
議会は、2000年までは主にチェック監査機能が求められていた。しかし、同年の地方分権一括法施行に
より、自治体の仕事が増えたのに伴い、その最終決定権を握る議会の役割が増えた。今後 議会には首長提
案の議案の修正及び否決・議案に対する議員個人の賛否公開・議員政策条例制定の3つが求められている。
だが、先述した3点を行っていない『3ない議会』が全国で36%の議会である。今後は、議会に求められ
ている3点について、どのように取り組んでいくかがポイントである。
【寺井克之氏(松山市議会議長)】
議会は、議案の審議に加え、政策立案型議会への転換を進め、市民が求めるものについては議員による政策
条例の立案も積極的に行い、変えていくものがあれば進んで変える勇気と決断力を持つこと。松山市では、
個人の議決賛否をHPや広報誌に載せるようにした。また、自殺防止条例を政策立案した。
【パネルディスカッションを聞いての感想】
上記に記載したように、議会に求められているのは様々である。議員政策条例については、特に意見が分か
れたような気がした。しかし、個人的にはいずれにしても議員(議会)に求められているものは、①監査機
能 ②政策提案・条例制定 ③市民の意見・要望を執行側に伝える ④議員・議会活動など情報公開である
と思う。①については、議決と予算・決算委員会などでその機能を果たしていきたい。②については、本会
議の一般質問や常任委員会の所管事務調査で執行側に提案できると思っている。もちろん、議員政策条例に
ついても研究はしている(日経グローカルセミナーの参加≪HP活動報告24年1月NO3参照)・経済市民委
員会で視察した燕市の中小企業振興条例≪HP活動報告23年7月≫や、今年の総務委員会で訪れた貝塚市の空
き家空き地条例≪HP活動報告24年7月参照≫など)。③については、多い・少ないはあるが全議員が行って
いることである。④については、年2回の市政報告書の作成配布・年2回の市政報告会(5月と1月は新年
会を兼ねる)とHPによる活動報告やブログの実施である。会派 伊勢崎クラブにおいても、年2回の市政
報告書の折り込みチラシ・市政報告会・HPによる活動報告を行っている。いづれにしても、市民から議員
・議会は『何をしているのか?』と思われないように個人的な活動は継続実施をしていきたいと思う。その
ことが、市民の皆さんが議員・議会に関心を持って頂く近道であると思う。
2日目は、「大震災における議会の役割」について、課題討議があった。以下にポイントを記載したいと
思う。
【平田 武氏(南相馬市議会議長)】
原発事故警戒区域等の指定が、発電所から直線距離による同心円で設定したことにより市が分断された(行
政区別などの方法があったのではないか)
【渡邉 武氏(名取市議会前議長)】
被災者の要望のとりまとめや被災状況・復旧状況・支援策などの情報提供のため、任意の会議として「東日
本大震災復興に向けての情報交換会」を4月20日から毎週水曜日に定め実施した。

【課題討議を聞いての感想】
議会議員は、災害対策本部のメンバーになっていないケースがほとんどである。出来れば、議長・議会事務局長は本部に入り、災害対策本部会議の情報を議員に伝えることが望まれる。また、そのような環境になっていなくても災害事前準備として議員は、自助の大切さ(共助・公助に頼りがちなる傾向があるため)を住民に伝える役割がある。

併せて、危機予知トレーニングを住民と一緒に行うこともできる。災害時・後は、後方支援や住民の声の集約の役割が求められる。また、避難所での苦情(タバコ・ペットの問題)の仲介・解決や、地元を知る議員であるからボランティアと行政の仲介役が期待される。また、友好都市・提携都市など遠隔地自治体との交流も求められる。

以上研修フォーラムで学んだ事項を、本市に反映できるように努めたいと思う。

【全国市議会議長会研究フォーラム会場】